「ああ、これは一生やるやつだな」
初めてサーフィンスクールに行った日、俺はそう思った。
コーチにボードを押してもらって、何回かで立てた。
スーッと波の上を滑った。
あのときの快感が忘れられなかった。
もう一度、あれを味わいたい。
さて、どうするか。
まずは、ボードがいる。
ムラスポでサーフボードをレンタルすることにした。
1週間。
借りてみると、1週間なんてあっという間だった。
もう返さなきゃいけない。
次のボードを探さないと。
そもそも、どんなボードが自分に合っているのかも分からない。
長いのがいいのか、短いのがいいのか。
何がどう違うのか。
何も分からない。
それでも、ボードがなければ海に入れない。
とにかく次のボードを探した。
ボードだけじゃない。
海のことも、何も分からなかった。
宮崎にはサーフィンができる海がいくつもある。
でも、いったいどこに入ればいいんだ?
同じ海でも、入っている人がいる場所と、誰もいない場所がある。
波だって、日によって全然違う。
いや、同じ日でも違う。
何を見て、どう判断すればいいのか。
さっぱり分からない。
だから、YouTubeを見まくった。
サーフィンの始め方。
ボードの選び方。
パドリング。
テイクオフ。
波の見方。
見れば見るほど、知らないことが出てくる。
動画を見て、海へ行く。
やってみる。
うまくいかない。
また動画を見る。
そんなことの繰り返しだった。
とにかく、がむしゃらだった。
40歳を過ぎて、サーフィン一年生。
何も知らない。
何もできない。
でも、面白くて仕方がなかった。
時々、天のごほうびで波に乗れることがあった。
スーッ。
あのスクールの日と同じように、身体が波に運ばれていく。
うわ、気持ちいい。
最高だ。
ところが、次は乗れない。
その次も乗れない。
さっきは乗れたのに。
何が違うんだろう。
自分では同じようにやっているつもりだった。
でも、結果は全然違う。
たまたま波がよかったのか。
ボードの位置がよかったのか。
パドリングがうまくいったのか。
分からない。
時々もらえる、ラッキーなごほうび。
それがうれしくて、また海に行く。
そんな毎日だった。
ただ、この頃の俺には、まだ分かっていないことがあった。
サーフィンが難しいということは、少しずつ分かってきた。
でも、海そのものがどれほど手ごわい相手なのか。
それは、まだよく分かっていなかった。
