第2話 40歳、サーフィン一年生。

「ああ、これは一生やるやつだな」

初めてサーフィンスクールに行った日、俺はそう思った。

コーチにボードを押してもらって、何回かで立てた。

スーッと波の上を滑った。

あのときの快感が忘れられなかった。

もう一度、あれを味わいたい。

さて、どうするか。

まずは、ボードがいる。

ムラスポでサーフボードをレンタルすることにした。

1週間。

借りてみると、1週間なんてあっという間だった。

もう返さなきゃいけない。

次のボードを探さないと。

そもそも、どんなボードが自分に合っているのかも分からない。

長いのがいいのか、短いのがいいのか。

何がどう違うのか。

何も分からない。

それでも、ボードがなければ海に入れない。

とにかく次のボードを探した。

ボードだけじゃない。

海のことも、何も分からなかった。

宮崎にはサーフィンができる海がいくつもある。

でも、いったいどこに入ればいいんだ?

同じ海でも、入っている人がいる場所と、誰もいない場所がある。

波だって、日によって全然違う。

いや、同じ日でも違う。

何を見て、どう判断すればいいのか。

さっぱり分からない。

だから、YouTubeを見まくった。

サーフィンの始め方。

ボードの選び方。

パドリング。

テイクオフ。

波の見方。

見れば見るほど、知らないことが出てくる。

動画を見て、海へ行く。

やってみる。

うまくいかない。

また動画を見る。

そんなことの繰り返しだった。

とにかく、がむしゃらだった。

40歳を過ぎて、サーフィン一年生。

何も知らない。

何もできない。

でも、面白くて仕方がなかった。

時々、天のごほうびで波に乗れることがあった。

スーッ。

あのスクールの日と同じように、身体が波に運ばれていく。

うわ、気持ちいい。

最高だ。

ところが、次は乗れない。

その次も乗れない。

さっきは乗れたのに。

何が違うんだろう。

自分では同じようにやっているつもりだった。

でも、結果は全然違う。

たまたま波がよかったのか。

ボードの位置がよかったのか。

パドリングがうまくいったのか。

分からない。

時々もらえる、ラッキーなごほうび。

それがうれしくて、また海に行く。

そんな毎日だった。

ただ、この頃の俺には、まだ分かっていないことがあった。

サーフィンが難しいということは、少しずつ分かってきた。

でも、海そのものがどれほど手ごわい相手なのか。

それは、まだよく分かっていなかった。

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